和歌と俳句

鶏頭 鶏冠 からあい

鶏頭は増上慢の菩薩かな 喜舟

海士が家や鶏頭赤く波頭 喜舟

鶏頭やお伝の墓の天王寺 喜舟

降るほどに昏くなりゆく鶏頭花 鴻村

鶏頭の影走りつつ伸びにけり たかし

鶏頭の夕影並び走るなり たかし

鶏頭のほとほと暮れてまだ暮るる たかし

鶏頭のおのづからなる立並び たかし

茂吉
小さくてくれなゐふかき鶏頭は野分の風にうごきつつ居り

茂吉
わが庭にならびて低き鶏頭はひと夜あらあらしき雨に流れぬ

月上るまでくれなゐや鶏頭花 青邨

相似たる鶏頭二本唯立てり たかし

月の餅搗くや鶏頭真ツ赤なる 水巴

鶏頭は燃ゆれど空は高けれど 鳳作

茂吉
丈ひくく鶏頭の花咲きそめて一本ならぬ親しさもあり

鶏頭の矮醜なるにちかづきゆく 誓子

四五本のけいとう燃えてゐる疲れ 鷹女

父の墓赤いけいとうは侘し過ぎる 鷹女

鶏頭の厚き花瓣に日がさせる 誓子

絶壁の端の鶏頭の朝日燃ゆ 草田男

昼餉どき鶏頭女らを凌ぐ 波郷

鶏頭を犬や赤子の如く見る 波郷

鶏頭やいづくをゆくも旅の袖 波郷

鶏頭に隠るる如し昼の酒 波郷

鶏頭の夜を照らされて常ならね 波郷

町裏は鶏頭畠丘に墓 誓子

門入りてまづ鶏頭のほむらかな 楸邨

極まりし鶏頭の緋に還りつく 楸邨

鶏頭をまはれば色のかはりけり 楸邨