黛を落さず祭稚児通る
万緑に吊橋動を経ては静
巣燕も覚めゐて四時に竈を焚く
一力の古扇風器風起す
青田より直ぐに高嶽信濃なり
手力男擲げたる青嶺注連を掛け
護摩壇のぐるり青嶺のとり囲む
高きより青淡路見る鳥の眼で
鮎に張る鶴翼の陣下り簗
芒原熔岩流が凝固せる
石原に溶岩流が凝固せる
神の田の二つ田稔り同じなる
深草の田ほど黄ならず神の田は
沙羅双樹時を同じく紅葉して
重き材を宙にぶらりと紅葉谷
君見ずに並木の銀杏黄となるよ
蕊張るは物を云うなり曼珠沙華
渦潮に竜骨の残甲板の破
夜の枯野来る両眼の爛々と
生きてゐる牡蠣その殻のざらざらに
牡蠣の実の粒粒生ける盛り上り
牡蠣殻を積みては山を高くする
牡蠣殻の同じ高さの双子山
枯洲より見る南面の福山城
欠伸して顔の軋みし日向ぼこ