和歌と俳句

曼珠沙華 彼岸花

山墓に午後もうるほふ曼珠沙華 蛇笏

雨の日も茎並みそろふ曼珠沙華 蛇笏

曼珠沙華濡るれば濡るる野の烏 鷹女

曼珠沙華今朝出頭す二寸かな 茅舎

三日はや一尺五寸曼珠沙華 茅舎

四方より馳せくる畦の曼珠沙華 汀女

あち向いてどの子も帰る曼珠沙華 汀女

曼珠沙華泣き出でし子を負ひすかし 楸邨

知らぬ顔ふりかへり笑ふ曼珠沙華 楸邨

曼殊沙華かなしきさまも京の郊 友二

曼珠沙華真赤で稲荷鮨食べる 茅舎

村の上の山にも赤し曼珠沙華 たかし

駈けり来し大烏蝶曼珠沙華 虚子

つきぬけて天上の紺曼珠沙華 誓子

寂光といふあらば見せよ曼殊沙華 綾子

荒降りの赤土流れ曼殊沙華 綾子

曼殊沙華軌道ここより岐れゆく 波津女

曼珠沙華描かばや金泥もて繊く 素逝

濁流にうすら日射し来曼殊沙華 綾子

曼珠沙華雲はしづかに徘徊す 誓子

海上に星らんらんと曼珠沙華 誓子

海陸の間の鉄路の曼珠沙華 誓子

土堤裏に墓四五そして曼珠沙華 誓子

天の紅うつろひやすし曼珠沙華 誓子

曇り日は眼しづかに曼珠沙華 誓子

まんじゆしやげ仮名にて書けばはかなさよ 誓子

紅蘂に日は当り散る曼珠沙華 誓子

蘂張れる曼珠沙華掌を合せたく 誓子

波ゆけばひかりを放つ曼珠沙華 誓子

わが旅にさかりを過ぎし曼殊沙華 波津女