和歌と俳句

曼珠沙華 彼岸花

雨あしのつばらに見えて曼珠沙華 蛇笏

曼珠沙華稲架木を負ひてよろめき来 波郷

墓となりぬはしやぎだす曼珠沙華 鷹女

曼珠沙華火宅めがけて消防車 草田男

和服著てこたびは曼珠沙華の旅 立子

曼珠沙華うしろ向いても曼珠沙華 鷹女

まんじゆしやげ希蝋の聖火道それず 静塔

月代や蘂うかべたる曼珠沙華 波郷

歌に知る東の國の曼珠沙華 青畝

曼珠沙華日本武の征きし国 青畝

回想がちにまんじゆさげまた群がるよ 林火

曼珠沙華もう数へねば花消えよ 楸邨

見ねばよかり消えんとすなる曼珠沙華 悌二郎

曼珠沙華すがれて花の老舗たり 誓子

林出ればチャタレーの森曼珠沙華 波郷

蕊張るは物を云うなり曼珠沙華 誓子

曼珠沙華泣かぬ少女の嫌はるる 楸邨

転移てふかなしき語あり曼珠沙華 波郷

さみどりの直き茎よし曼珠沙華 波郷

彼岸花父の病を母嗣ぎき 波郷

曼珠沙華漁夫過ぎてより昏れ果てぬ 汀女

朱をふふむきのふなかりし曼珠沙華 悌二郎

茎襖またひまなけれ曼珠沙華 爽雨

曼珠沙華野を思はする庭の土手 みどり女

太陽を厭ふが如し曼珠沙華 みどり女

曼珠沙華二本づつ立ち雨の中 みどり女

大雨に朱の糸くづさず曼珠沙華 みどり女

きざまれし如く打たれぬ曼珠沙華 立子

鯰にて釣のけりつくまんじゆしやげ 静塔

香薬師もとに還らず曼珠沙華 青畝

藪に集り畦々に散り曼珠沙華 林火

曼珠沙華あたりに他の花寄せず 林火