和歌と俳句

平畑静塔

隅に身を攻めてちぢめて墓掃除

美術巡礼銀河のみちは不案内

月光を刈りをり動きをり稲は

蓮の葉のごわごわさはる原爆忌

地声にて聖母農園鳥威す

鉢巻の輪を切り株に鵙の森

老いて動かす秋晴の花電車

大和稲扱低雲に束を投げ

荒涼ととべり嘗ての稲雀

ねりあめでつながる駄菓子秋のくれ

天辺に紅葉嫌ひの馬が立つ

豊年や明治トンネル口すすけ

入国の足は落穂を避けゐたり

まんじゆしやげ希蝋の聖火道それず

山川に歩みまけたり秋祭

銀髪やみづからの籠を負ひ

母達や数珠繰るごとくを選る

秋のくれ拓地しみじみ昔あり

稲車見えぬ尊徳後を押す

シヤベルにて指せし紅葉は猿隠し

穂すすきや内ぶところに平家村

そば咲くや姿を作る和言葉

雨降やそばの花にて消ゆる雨

撫子や腹をいためて胤をつぎ

三日月は山も踊も照らさざる