平畑静塔
秋祭倉稲魂は嶮にます
総髪の枯れしを結ぶ秋祭
菊をみる菊にみられて澄みにけり
雲閉ぢよ芦の化けたる芦車
はぐれたるはかなき霧にまつはられ
新盆や風しわしわと明け来る
山猿の内腿白し盆やすみ
細道は鬼より伝受葛の花
むらさきに指をとどかせ葡萄樹下
葡萄終りてボルドーの白たつぷり
秋晴に在り神山の自然体
花野にて摘みし竜胆手にかこふ
日がさして馬の目も露溜めにけり
馬子の綱鎌首つくる秋のくれ
菊作り仕上げし菊に現れず
女人堂紅葉の中に塗濃ゆし
ただ二字で呼ぶ妻のあり菊膾
墓通ひばかり長崎菊提げて
秋の夜をマリア徳利と見てすごす
豊の秋尊徳の末堂に読む
すすき出穂奥の細道畔をなす
赤とんぼ石塀入門せずに去る