和歌と俳句

原 石鼎

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梅雨近き土にとまれる蝶々かな

三つつれて梅雨のはれ間の綾羽蝶

初夏や撫子地に色を得たり

夜の雷雨やむけはひなき牡丹かな

生ふるものみなすこやかや牡丹園

よべの雨に露しとどなる牡丹かな

夏の蝶我をめがけて下りて来し

夏の蝶こぼるる如く風の中

大空やみなうつむいて桐の花

こぞの実の古がらつけて桐の花

あれはてし畑の中の桐の花

襖より蝶とび出でぬ若葉風

さな猿よどくだみ食うてあてられそ

どくだみを喰ひ渉りぬ檻の猿

梅雨はれて静かにひくき蝶々かな

降りそめて須臾に晴れたる梅雨かな

篠の子に露しとどなる梅雨かな

夕べはや大樹によりしあり

草のやがてとびたるいとまかな

青芒先のみ見えて縁はるか

汀より草の土手まで青芒

月見草を人抱へ来る青芒

若竹やなきとぶ雀夕なる

咲きのこる薔薇の花壇に夕立かな

夏山や神の心を人に見し

大いなる緋ダリヤ草に逆しまな