夏めきて真夜に鳴きたる梟かな
田舎家の餅大いなる薄暑かな
水色の蝶あきらけく薄暑かな
ネルの人庭にこごみて何か引く
ネルの人に小さき梅の若葉かな
籐椅子に沈めるネルの夫人かな
きゆう当つる玉は象牙や窓若葉
夏めきて夜更にいたる球の音
相逐うて鳰鳴き躍る若葉かな
浮く鳰の美しかりし若葉かな
いとも小さき魚釣りあげぬ若葉人
いち遅き庭木も若葉よそほえる
紫の座布団一つ窓若葉
楪の若葉の上やとぶ燕
楪のしきりに殖ゆる古葉かな
板屋うつ筍流し大粒な
今日の日の蚕豆摘みぬ前垂に
蚕豆や大暑に近く人若し
そらまめをむくやとび出し二つ三つ
蚕豆をむき終せたる夕かな
花あやめ横にほどけてひらく花も
白髪の老に会ひけり著莪の花
誰がために湛へし酒瓶ぞ梅雨入窓
梅雨入空暁に似て日もすがら