和歌と俳句

富安風生

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青簾山王祭り近づきぬ

蛍狩提灯つけし馬に逢ふ

早苗田にのり入れてある小舟かな

一つ咲く菖蒲を剪りぬ業平忌

門川に菖蒲花咲き禰宜が宿

行き過ぎて牡丹の門に立ちもどる

玉水のしげくなりたる牡丹かな

見つつある牡丹いつか暮れかかる

風だちて萍の花なかりけり

鬼灯の一つの花のこぼれたる

小雨降るはなればなれの浮葉かな

風鈴も四葩の毬も去年のまま

こでまりに端居の頃となりしかな

箱釣や棚の上なる招猫

手捕りたる鯉を活けをり梅雨の宿

ありと聞く温泉宿はいづこ花卯木

小わつぱの舟に棹さす浮葉かな

大文字夏山にしてよまれけり

滝の糸おぼつかなくもかかるかな

道問へば知らずと答ふ蛍狩

蛍火や山のやうなる百姓家

麦の穂はのびて文福茶釜道

紫陽花にもの音とてはなかりけり

柿の花こぼるる枝の低きかな

名札立つ万葉集の葛の花

向日葵やいはれ古りたる時計台

刈草の一日の日に干たりけり