桐咲いて働くものの夏来る
草の戸に弓を飾りて業平忌
一掬の涼風たるをもて任ず
夏蜜柑むき緑蔭は二人のもの
分釐の乱れなかりし若楓
緑蔭をやをら起つべき刻来る
鮎の竿のべて林相美しき
左右の山暮れて相似る橋涼み
夏山家一軒すねてとび離れ
ただ一つ困ずることに蠅多し
その時われ八歳なりし合歓の花
子なければ妻とたうぶるさくらんぼ
端居して昨日は今日の昔なる
黄菖蒲が瓦礫に咲ける曇かな
髯剃りしあぎとの青き夏をとこ
筋交の大八文字梅雨の寺
緑蔭の土掻く黴の香を起す
城跡へ狭田を重ねてうつぼ草
夏草や砦構へに狭田長田
麦はざに西日厳しき荒磯かな
夕顔の花と咲きたる憂きさだめ
絵心は百合の瑞葉に金を刷く
一渓を抉りし天斧ほととぎす
野の川を隠さう茨の咲き垂るる
昨日植ゑてあはれ今日はや植田さび