和歌と俳句

雲の峰

むさしのや川上遠き雲の峯 子規

谷底に見あげて涼し雲の峰 子規

野の道に撫子咲きぬ雲の峰 子規

むさし野に立ち並びけり雲の峰 子規

山を出てはじめて高し雲の峰 子規

雲の峰ならんで低し海のはて 子規

雲の峰白帆南にむらがれり 子規

午砲打つ地城の上や雲の峰 漱石

中空にはやて吹くらん雲の峯 碧梧桐

黒船の動き出しけり雲の峯 碧梧桐

水涸れて城将降る雲の峰 漱石

子規
照りつづく土用のそらの雨かれて雲の峰わく雲の峰の上

子規
蝉の鳴く椎の老樹の木のうれに半ば見えたる夏雲の峰

子規
雲の峰空に立つ日は餌をはこぶ蟻のなりはいいそがしきかな

子規
雲の峰殺生石の上に立ちて那須野を越ゆる旅人もなし

盥舟雲の峰迄至るべく 虚子

雲の峰風なき海を渡りけり 漱石

桑摘みの昼をもどるや雲の峰 亞浪

雲の峰雷を封じて聳えけり 漱石

空をはさむ蟹死にをるや雲の峰 碧梧桐

官命に伐る檜山あり雲の峰 碧梧桐

持山の果なし藪や雲の峰 碧梧桐

外輪山に立つ峰雲や阿蘇あらぬ 碧梧桐

馴るれども天水湯浴雲の峰 碧梧桐

首里城や酒家の巷の雲の峰 碧梧桐

蘆の間なる飢鳥鳴くや雲の峰 碧梧桐

四国路の方へなだれぬ雲の峰 漱石

旗立てて工廠見学雲の峰 虚子

ぐんぐんと延びゆく雲の峰のあり 虚子

西へ西へ吹かれ峯雲の聳ち消ゆる 亞浪

海の上にくつがへりけり雲の峰 鬼城

わら家根や南瓜咲いて雲の峯 鬼城

杣が頬に触るる真葛や雲の峰 石鼎

草を馬四角に積んで雲の峰 みどり女

絶壁の上の芝生や雲の峰 茅舎

ゆづり葉に一線の朱や雲の峰 石鼎

縁柱に遠き芭蕉や雲の峯 石鼎

島と陸延びて逢はずよ雲の峰 虚子

獅子の顔に暗き影あり雲の峰 石鼎

日と我の間恋しや雲の峰 石鼎

畑物に大地さびしや雲の峰 石鼎

いつの世にか亡ぶる我に雲の峰 石鼎

潮木ふむ鴉の爪や雲の峰 石鼎

大猟に浜の人出や雲の峯 淡路女

千樫
夕ぐれて軒並みくらしひむがしに峯雲たかく黄にかがやけり

あるときをひろごりもゆる雲の峰 石鼎