簾かかげてとどき居る灯や青芒
日覆とれば俄に高し青芒
杣が戸に谷あけ易し青芒
小田の畦崖に添ひゐぬ青芒
まどかにも月出て安し天瓜粉
庭闇へ去るとき白し蛾のつばさ
一つ盆にコツプ二つや麦酒ぬく
蠅とぶや汀の石に下駄の跡
蒼蠅や草をのぼりて飛びにけり
鉢の木に蠅とぶ見ゆる簾哉
蠅打つて眼にたれさがる老の眉
うなり来し蠅に怖れし蠅のあり
ふせ肥に背戸の月夜やほととぎす
沖の岩に這ひ上りたる泳かな
棕梠の下焼けつく石にとかげかな
柿の木の幹をのぼりしとかげかな
積材を横り越えたるとかげかな
鮎梁や堰より上の谷のさま
梅天や古葉おとして大八ツ手
午寝せし茣蓙の枕や壁の下
夏帽の仰ぎて去りし実梅かな
青梅に軒まで積みし薪かな
でで虫に竹幹青し夕まぐれ
でで虫の草を這ひ居り壁の下
でで虫につくることなし草の雨
でで虫に昼夜相追ふ日と月と