夏帽や鞨鞭の鼻素鈴の瞳
柿の嫩葉にあらはれて居り雲の峯
蓮池の夕明りとぶ蛍かな
蓮池にてらしはじめし蛍かな
池の雨晴れゆく藪の新樹かな
肩這ふをはらへばくものあらぬ方へ
夏木立青葉若葉もなくなりぬ
松籟や蓮葉に落ちて蛾一疋
山里は岩藤たるる青田かな
雑木に藤房たるる青田かな
桑畑の日反す色や青田中
木雫にはねかへり這ふ毛虫かな
筍や畑へかけて竹落葉
筍に峡をたのめの祭かな
筍の斑に翠微来る朝日かな
縁柱に遠き芭蕉や雲の峯
垢づきし我に大路や雲の峯
厨音いつしか絶えし蚊帳かな
蚊帳の灯のとどける槇の暗さかな
電線に映る灯のある夕立かな
蚊帳に明くる夜明の草やねむり草
畝土を走る小蛇や麻を刈る
紫陽花の古木に蝶の光かな
羽抜鳥家をめぐりて日もすがら
落雷の火柱たちし簾かな