蓮の葉に蜘蛛下りけり香を焚く
本来はちるべき芥子にまがきせり
若葉して又新なる心かな
髪に真珠肌あらはなる涼しさよ
のうぜんの花を数へて幾日影
看経の下は蓮池の戦かな
白蓮に仏眠れり磐落ちて
ほのぼのと舟押し出すや蓮の中
蓑の下に雨の蓮を蔵しけり
田の中に一坪咲いて窓の蓮
明くる夜や蓮を放れて二三尺
蓮の葉に麩はとどまりぬ鯉の色
石橋の穴や蓮ある向側
一八の家根をまはれば清水かな
したたりは歯朶に飛び散る清水かな
宝丹のふたのみ光る清水かな
庭の石動いて見ゆる清水哉
樟の香や村のはづれの苔清水
澄みかかる清水や小き足の跡
法印の法螺に蟹入る清水かな
追付て吾まづ掬ぶ清水かな
汗を吹く風は歯朶より清水かな