親やしたふ 子やしたふらん 和歌の浦の 蘆間かくれに たづぞなくなる
雲のごと したがふ人は ありとても いかでかくさん 天津日かげを
松山の 小町もあとに なり平や きせんにのらん かぜに大伴
平穏と 祈りしかひも あら海や 金毘羅様へ あげし小間物
便たづね 乗りて野暮流や 丈鬼船 まま吐き出して 泣いた正岡
三津よりは 四十里足らぬ 海上を にくさも二九し 十八時間
さぬきなる 海より深き 多くみ屋は 巧みな口で 人をつるの間
血にあらぬ 小間物までも 吐き出して 大損かけたと 子規啼く
小間物を ささげし甲斐も ありがたや 金毘羅丸と 船も名のれり
今迄の 書生の姿 あら神や 俄に鼻を 高くなしつつ
月影も やどさじとてや 袖の露 はらふはつせの 山颪かな
よろよろと よろめく人か よろこんで よろふといふや よふろうの瀧
自由だと しやべるやつらが 改しんを せねば政党 出来ぬなりけり
一つ家の 石のまくらの それならで ばんのかはりに くれ竹の杖
長橋で 都の富士を 見てあれば 蜈蚣のやうに 汽車の行く也
さざなみの 波路遙に 竹生嶋 くるるもおしき 中濱の里
月は見えず ささもくみえず 今宵しは などてわびしき やどりなるらむ
越路山 遠くへだてし かりがねも 秋は比巴湖を わたる新聲
山田潟 沖さしのぼる 月影は 舟もろともに 波やわたらむ
朝まだき 浪速江かけて 寫山 霧たちのぼる 山のまにまに