この曲浦百家一長の幟かな
梅雨暮るる潮の底の藻の動き
梅天や浪をかぶりし岩の色
蚊喰鳥嶼の方よりほのめきぬ
蝙蝠の二つゐて飛べり浜の月
眼前に人出て暑し浜の街
馬よりも馬子の蹴埃り午暑し
命かけて壁虎殺しし宿婦かな
いつも彼の孀なんばん畑に一重帯
燈台の光さすとき海涼し
灯し置きて磯に涼めば宿恋し
涼しさに堪へて人あり磯しぶき
行水や艶なるは君が襟脚あたり
心地よき腹の痛みや暑気くだし
水打つて四神に畏る足の跡
色濃さに堪へて帆白し夏の海
秋近き垣に見ゆるや隣の灯