和歌と俳句

原 石鼎

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この曲浦百家一長のかな

梅雨暮るる潮の底の藻の動き

梅天や浪をかぶりし岩の色

蚊喰鳥嶼の方よりほのめきぬ

蝙蝠の二つゐて飛べり浜の月

眼前に人出て暑し浜の街

馬よりも馬子の蹴埃り午暑し

命かけて壁虎殺しし宿婦かな

いつも彼の孀なんばん畑に一重帯

燈台の光さすとき海涼し

灯し置きて磯に涼めば宿恋し

涼しさに堪へて人あり磯しぶき

行水や艶なるは君が襟脚あたり

心地よき腹の痛みや暑気くだし

水打つて四神に畏る足の跡

色濃さに堪へて帆白し夏の海

秋近き垣に見ゆるや隣の灯