和歌と俳句

原 石鼎

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日中の影落したる梧桐かな

蝙蝠や草に埋るる寺の塀

夕立や浮草を走る水の玉

炎天を怖れず見るや巨樹の下

炎帝の下さはやかに蛭泳ぐ

逞しき泥の腓や蛭吸へり

夜の国へかくて日暮るる水馬

帆影来て浮葉によるや水馬

白雲や腹かへし遊ぶ水馬

水馬去りしを知らず田草取

合歓深くさし入る月や水馬

梅干すやおどろの髪に白手拭

石の梅漬けて日くれぬ四囲の山

蠅ねぶる牛の涙や午寝時

午寝人団扇はなさぬ畳かな

海鳥の群ら立つ下や午寝舸夫

午寝人の蓋顱映るや床柱

午寝さめし眼にをかしさや棕櫚の鬚

母すでに昼寝さめたる流しもと

しろじろと古き浴衣やひとり者

帷子や嫉妬の群に居て驕し

衣とるや壁へ衝つ張る衣紋掛

呂羽織をかけし重さや衣紋かけ

衣紋掛の朱漆を這ふ小蜘蛛かな

芥子散るや壁にかたむく衣紋掛

そこはかと暮るる日ありぬ衣紋掛