ときをりの人聲の田を植ゑ去れり
噴水の玉とびちがふ五月かな
子供等の英語の窓の花葵
屋根の上の異国の旗や雲の峰
夕立や船影白くかき消つつ
ガソリンと街に描く灯や夜半の夏
香水の坂にかかりて匂ひ来し
夏の蝶池の面に死ぬ水輪かな
舟にさす日傘のうちの花藻かな
風鈴のそろはぬ音なれ二つ吊り
花柘榴また黒揚羽放ち居し
かいまみし人の廚や花葵
晝寝ざめ面に垂るる簾かな
ぶつかるは灯に急く途の金亀虫
凌霄花や問ふべくもなき門つづき
船蟲に忽然としてヨツトかな
今日の日の凌霄花にまで傾きし
アンテナの竿をのぼりし月涼し
風鈴のもつるるほどに涼しけれ
病室をうちといふ子に来る蚊かな
沖の帆にいつも日の照り紅蜀葵
夕立の前ぶれ雨や紅蜀葵
汗ばみて来て香水のよく匂ふ