和歌と俳句

長谷川かな女

茅萱たてゝ夏の神楽の始まりし

草赤し先に歩く子の盆提灯

零余子忌大闇に湧く何の力

母も子も暑さに負けず麦湯呑む

川を渡りて帰る人なり夏嵐

淋しきことをきく夏萩の中の窓

夏草に投げれば花火爆発す

含み吐く旅籠の水や半夏生

月に眠らぬキヤンプもあるや月を見る

宮城野の夏野を飛べる鴉かな

人乗せて吹かるゝ舟や葭雀

よしきりに焼茄子を出す茶亭かな

牡丹みな崩るゝ強き日あたれり

山鳩は人顔に見ゆる若葉頃

紫陽花に瞳ばかりの記憶あり

水噴いて夜の花紅き薄暑かな

大暑の忌忘れず旅を終りけり

草木の土用に人は疲れたり

懐ろのもの落ちし音に夜の秋

匂ひ袋銀座の夜を匂やかに

冷麦の通るのんどよ母に逢ひ

牧草を積みし間の雲の峯

うつ伏して山角這ひぬ夏の霧

夏山を叩いてゐるは鳩なるか

夏の駒山梨の花嗅ぎて去る