唐黍に簾をながす厨かな
秋草に救苦観世音立たせけり
御頬ぬれて優し秋草観世音
秋草の御浄土なり甘露慈雨
御法尼のすゞしき髪や萩の風
初秋の山日が崩す山の砂
初秋の浅間裾野に夜雨はげし
露霜に強かれて縫ひし千結び
秘仏拝めば椋群るゝ杉のすてつぺん
白き粉を浅間ぶどうは刷けるかな
染め分けて鬼灯は夜のものならず
深藍の鯉魚に秋の藻たほれけり
爽涼の竹に書屋の残りけり
火の燃ゆる石を抱きぬ秋の夢
閉めしまゝ日さゝず暮れし秋の窓
初潮の高さに起きて不二を待つ
虫を聴く沼津垣なるうちそとに
木犀に木馬叩けばうごきけり
コスモスにみんな薄翅を立てし虫
拾ひたる石に色あり吾亦紅
モンペ穿く赤のマンマに笑ひながら