和歌と俳句

長谷川かな女

唐黍に簾をながす厨かな

秋草に救苦観世音立たせけり

御頬ぬれて優し秋草観世音

秋草の御浄土なり甘露慈雨

御法尼のすゞしき髪や萩の風

初秋の山日が崩す山の砂

初秋の浅間裾野に夜雨はげし

新涼浅間晴れんとして蒼し

露霜に強かれて縫ひし千結び

秘仏拝めば椋群るゝ杉のすてつぺん

白き粉を浅間ぶどうは刷けるかな

染め分けて鬼灯は夜のものならず

深藍の鯉魚に秋の藻たほれけり

爽涼の竹に書屋の残りけり

火の燃ゆる石を抱きぬ秋の夢

閉めしまゝ日さゝず暮れし秋の窓

初潮の高さに起きて不二を待つ

虫を聴く沼津垣なるうちそとに

木犀に木馬叩けばうごきけり

コスモスにみんな薄翅を立てし虫

拾ひたる石に色あり吾亦紅

モンペ穿く赤のマンマに笑ひながら