八十の母手まめさよ萩束ね
山萩にふれつつ来れば座禅石
門とざしてあさる仏書や萩の雨
唐もろこしの実の入る頃の秋涼し
唐黍を焼く子の喧嘩きくもいや
不知火の見えぬ芒にうづくまり
大なつめ落す竿なく見上げゐし
人やがて木に登りもぐ棗かな
なつめ盛る古き藍絵のよき小鉢
銀杏をひろひ集めぬ黄葉をふみて
旅たのし葉つき橘籠にみてり
蜜柑もぐ心動きて下りたちぬ
わけ入りて孤りがたのし椎拾ふ
邸内に祀る祖先や椋拾ふ
菊摘むや群れ伏す花をもたげつつ
添竹をはづし歩むや菊も末
菊干すや何時まで褪せぬ花の色
日当りてうす紫の菊莚
大輪のかはきおそさよ菊莚
ひろげ干す菊かんばしく南縁
ぬひあげて菊の枕のかほるなり
橡の実のつぶて颪や豊前坊
秋晴や由布にゐ向ふ高嶺茶屋
木の実降る石に座れば雲去来
大嶺に歩み迫りぬ紅葉狩