和歌と俳句

杉田久女

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八十の母手まめさよ萩束ね

山萩にふれつつ来れば座禅石

門とざしてあさる仏書や萩の雨

唐もろこしの実の入る頃の秋涼し

唐黍を焼く子の喧嘩きくもいや

不知火の見えぬ芒にうづくまり

大なつめ落す竿なく見上げゐし

人やがて木に登りもぐ棗かな

なつめ盛る古き藍絵のよき小鉢

銀杏をひろひ集めぬ黄葉をふみて

旅たのし葉つき橘籠にみてり

蜜柑もぐ心動きて下りたちぬ

わけ入りて孤りがたのし椎拾ふ

邸内に祀る祖先や椋拾ふ

菊摘むや群れ伏す花をもたげつつ

添竹をはづし歩むや菊も末

菊干すや何時まで褪せぬ花の色

日当りてうす紫の菊莚

大輪のかはきおそさよ菊莚

ひろげ干す菊かんばしく南縁

ぬひあげて菊の枕のかほるなり

橡の実のつぶて颪や豊前坊

秋晴や由布にゐ向ふ高嶺茶屋

木の実降る石に座れば雲去来

大嶺に歩み迫りぬ紅葉狩