和歌と俳句

及川 貞

日曜のあしたの焚火秋深み

草もみじ焚火けむげの吾子が手に

門あるき零余子とる子の二三人

幾色の紅葉の丘に照る日あり

野をかへる鍬に秋日の尖り落つ

盆支度して古町のひそとあり

寝しづまる野の稲妻や星たゞし

閂を軋りはづしてけさの

さそり座も夜々傾きて秋に入り

すすきとる子の背かくれて風吹けり

望の夜のすすきとる野も門つゞき

障子貼るけさも曇とラヂオ言ふ

ひさに晴れてさはしけれども鵙のこゑ

朝寒の皆が出かけし門を掃く

はたはたや黍引く肩にとびつゞく

爆撃機甘藷畑暮れてなほ飛べり

初紅葉幾重の嶺のひとところ

不二が照る雑木もみぢの日々の窓

月にあゆみ父と子われはその中に

通草棚もるゝ月とて影を浴びぬ

稲妻はかかはりもなし字を習ふ

ひろふ声か朝戸にかぜの音

夕となりこぼれ白萩また掃きぬ