蝦夷鴉うなづきながら霧笛聞く
駒岳の秀の見えそめしかば霧笛歇む
赤とんぼ外人墓地の文字踏めり
コスモスや牛方宿に蠅居らず
もろこしの一皮したによきみのり
十字架を象嵌したる天高し
盃にとくとく鳴りて土瓶蒸
忍者めく都の北の案山子かな
火のごとき林檎ありけりトラピスト
嘴太の鳴きわめきをる山葡萄
冷まじく棹たわまして球磨下り
二教会寄りそひ錦なす野かな
翁忌や所思をはしらす許六宛
しぐるると球磨の釣人火を焚けり
不老水旅人汲めばしぐれけり
竜飛岬より西の余光や鴨わたる
落人の鎧ばろぼろ炉火明り
人吉の雨にわびしき衾かな
風花や孤客を得たる夕佳亭
金鳳や衣笠の雪うすうすと
煮凝のくだけおちけり老の膝