和歌と俳句

星野立子

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柳川の初冬の朝の舟だまり

時雨るるやさして急ぎの用もなく

遊ぶことばかり考へ日向ぼこ

帰り来し故郷の山河虎落笛

の子のうるみし瞳我を見る

水鳥や明日は明日はと人はいふ

美しき夜目の生垣寒の月

敷石にはずみ下り立ち寒鴉

石垣の間に鳩住めり濠の

寒風を突いて人皆用ありげ

山茶花や思ひ出あれへこれへのび

広島や市電に牡蠣の桶持ちて

美術館出て倉敷の小春かな

発車ベルまだ鳴りつづけ冬日和

二の酉もとんと忘れて夜に入りし

お茶の間のテレビがきこえ日向ぼこ

日の沈みたる空の色枯木山

短日の灯し頃をバスにあり

山茶花に今日虻も出ず人も来ず

初冬やどこに立ちても見ゆる滝

いただきし斎に温もり冬紅葉

何故か昨日なつかし冬籠

寒風にま向き歩きて泪拭く

川風にあまりに寒し都鳥

煖房や何をとりにぞ此処に来し

この後は八手の花も愛で生きん

わが庭のどこ歩きても石蕗と虻