おくるなりおくらるゝなり時雨ふる
ねこ舌にうどんのあつし日短か
おとろへはまづ足よりぞ草枯るゝ
客といへば医者のくるだけ冬ごもり
気やすめの薬ばかりよ冬ごもり
冬ごもり閉ぢてはあける目なりけり
クリスマス海のたけりの夜もすがら
空っ風餅搗く音のどこよりか
酉の市はやくも霜の下りにけり
はんぺんの肌かぐはしき小春かな
いとけなきものゝいとしき時雨かな
ナプキンにパンぬくもれるしぐれかな
枯萩の宿にてつびんたぎりけり
枯萩やしきりにとべる朝すゞめ
芒枯れ蘆枯れし日のひかりかな
菊枯れて枯れてあとかたなかりけり
老残のおでんの酒にかく溺れ
熱燗のいつ身につきし手酌かな
沖に立つしら波みゆる枯野かな
さゝなきややうやくくらき靄のかげ
霜、寒やしるしばかりの松を立て
買ひえたるよきネクタイや年の暮
鳥逃げし枝のさゆれや年の暮
ゆく年やしきりに岸へいどむ波
ゆく年や狐のかけしよだれかけ