和歌と俳句

久保田万太郎

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おくるなりおくらるゝなり時雨ふる

ねこ舌にうどんのあつし日短か

おとろへはまづ足よりぞ草枯るゝ

客といへば医者のくるだけ冬ごもり

気やすめの薬ばかりよ冬ごもり

冬ごもり閉ぢてはあける目なりけり

クリスマス海のたけりの夜もすがら

空っ風餅搗く音のどこよりか

酉の市はやくも霜の下りにけり

はんぺんの肌かぐはしき小春かな

いとけなきものゝいとしき時雨かな

ナプキンにパンぬくもれるしぐれかな

枯萩の宿にてつびんたぎりけり

枯萩やしきりにとべる朝すゞめ

芒枯れ蘆枯れし日のひかりかな

菊枯れて枯れてあとかたなかりけり

老残のおでんの酒にかく溺れ

熱燗のいつ身につきし手酌かな

沖に立つしら波みゆる枯野かな

さゝなきややうやくくらき靄のかげ

霜、寒やしるしばかりの松を立て

買ひえたるよきネクタイや年の暮

鳥逃げし枝のさゆれや年の暮

ゆく年やしきりに岸へいどむ波

ゆく年や狐のかけしよだれかけ