和歌と俳句

久保田万太郎

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たつぴつに雲水をつぎくるゝ

雲水のつぎくれし炭熾りけり

著ぶくれのおろかなる影曳くを恥づ

マスクもるゝ心の吐息きかむすべ

冬の夜の灯のおちつきにひそむ魔か

佛壇の買へし佛事や年の暮

長旅のはてのわが家や年の暮

ふところに最中つぶれたれ年の暮

耳のはたでつかれたり年の暮

年の灯やとほく廊下のつきあたり

瀧落つるところに石蕗の黄ありけり

藤の葉の黄ばみてもろきしぐれかな

佃煮のかけがみに日のつまりけり

百八の鐘鳴りいでぬ玉子酒

大根まだ干すに年忘れけり

梅入れて庭とゝのへり大晦日

百八の鐘いま鳴りやみしかな

たかだかとふけたる月や三の酉

七五三日和の蓮の枯れにけり

暖冬や憲法発布かたりぐさ

しめてある腰高障子十二月

去るものは追ふによしなき冬日かな

いくたびもすわり直して寒さかな

あたらしき筆を噛む歯の寒さかな

冬ざれのめつきり三の酉ひかへ