たつぴつに雲水炭をつぎくるゝ
雲水のつぎくれし炭熾りけり
著ぶくれのおろかなる影曳くを恥づ
マスクもるゝ心の吐息きかむすべ
冬の夜の灯のおちつきにひそむ魔か
佛壇の買へし佛事や年の暮
長旅のはてのわが家や年の暮
ふところに最中つぶれたれ年の暮
耳のはたで鐘つかれたり年の暮
年の灯やとほく廊下のつきあたり
瀧落つるところに石蕗の黄ありけり
藤の葉の黄ばみてもろきしぐれかな
佃煮のかけがみに日のつまりけり
百八の鐘鳴りいでぬ玉子酒
大根まだ干す寺に年忘れけり
梅入れて庭とゝのへり大晦日
百八の鐘いま鳴りやみしかな
たかだかとふけたる月や三の酉
七五三日和の蓮の枯れにけり
暖冬や憲法発布かたりぐさ
しめてある腰高障子十二月
去るものは追ふによしなき冬日かな
いくたびもすわり直して寒さかな
あたらしき筆を噛む歯の寒さかな
冬ざれのめつきり三の酉ひかへ