膝入れて冬夜泰けき古机
水の匂ひ空の匂ひの寒気なる
あはあはと吹けば片寄る葛湯かな
息白く長くわが生確かむかな
懐炉負へば終日うるみさびしき目
鏡なす大雪嶺を北の盾
夕焼はよその国雪籠る村
雪屋根の威やこの町三大寺
酒倉の切窓障子雪遊ぶ
雪風を聴く干割れんと円空佛
葱に土やるを見て山中に刻すごす
かいつむりみな潜りたり人も去る
極月の苦労の果の死なりけり
思はずの吐息にくもる冬の稿
机上冴ゆけふ一日を拠らざりし
おしくらまんぢゆう路地を塞ぎて貧などなし
鴨群るるさみしき鴨をまた加へ
茶が咲けり働く声のちらばりて
厚落葉踏む父母よりも師の恩に
柊の花や掃かれし土の匂ひ
小春訪ふスナックバーに茹卵
冬の日の出連山をまづ鷹がとぶ
冬の日の出赤失へばすでに老ゆ
朝日夕日眠れる山を赤く覚ます
奥へ奥へ夕日を送り山眠る