和歌と俳句

原 石鼎

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霜消しづく氷それを鵯の子かいくぐり

舞ふちりと縁に五彩や冬日ざし

日当りて雪の田家も一ながめ

雪の日や八時といへどうす曇

田の畦をのぞく鵐や雪晴間

お茶の花ひと盲ひしごと日が当たる

立冬や咲いてまもなき石蕗の花

墨染のうすしとも見え山茶花

白山茶花羽あるごとく散りにけり

もえながらまばらとなりぬ冬紅葉

鳥にげて枝うごきたる冬日かな

田のへりに藁ばかま涸れ冬日かな

冬の霧ある夜の大地親しけれ

夜明け来し巣を小鳥出し枯木かな

夕日鳥影はるかより枯るゝ木へ

木々枯れていつしか見ゆる白堊かな

竹筒に竹箸なんど夜鷹蕎麦

朝やけも夕やけも映る障子かな

焼きあげし真炭の紺に山日かな

笹啼の上枝下枝と日を恋うて

暁の日の染む上枝より笹鳴き

日さへあれば布団干したて冬紅葉

甜る飴に朝日とうつり枯木影

冬晴の肥汲む音の尊かり

大晴れの雪はまひるを踏んで音

雪潰えてそれよりあがるゆきげむり

立冬の鴉吹かれてわたげ立つ

山茶花ややすまるひまもなき人に

小春日にみどり明るく透く葉かな

七面鳥冬日の中にわらひけり

ひげさかに何かあふぎぬ冬日猫

天にみち白雲冬をとざしけり

蓼の穂にふゆ野の神は立つらしも

山繭の二つのみどり櫟枯れ

山繭の冬鮮やけき緑かな

山繭の青芋虫に似たる冬

けばだつてやはき緑や柞蚕繭

神棚の燈のふもとなる炬燵かな

深雪して白南天のいろまこと

馬の尾を引き騒ぐ子や今朝の冬

庭竹の穂ゆまた空へ冬の蜂

山茶花の地にちり霧のこめにけり

木の葉髪指もてよせてすてにけり

雨音もさすがにはさまざまな

大寒の四十雀樹へつと帰る

大寒の野にみじんなし枯れ芒

竹林に透く空青し冬の峰

深雪見むと軒へのべたる手燭かな

ひとり寝のつまらにかぜそひかせそと

頭巾を笑ふつまらの顔の二つづつ