天翔る我をゆめみつつ冬に入る
冬来るトワレに水の白く湧き
冬日の中父に似し子をさびしみゐる
寒波来る少年の身丈母を越え
おもひでの瞳に枯木立ありて来ぬ
寒木に耳あてて何を聴かうとする
林枯れ白雲われを脅す
寒林の陽にちちははの貌をゑがき
雲とほき冬木の幹をゆさぶれり
飴ねぶり大き冬日を背に負ふも
寒林を来てかなしみのいつかなし
厳冬の燈を身ほとりにして書かず
あまきもの欲れり寒夜の燈に疲れ
過ぎしかの日を瞼にし初冬なり
吾が侘し彼の冬原の羊より
冬来たる眼みひらきて思ふこと
冬来たるあはれ真青き西ひがし
常ならぬ世にありこれの松飾る
鷹さびし真澄みの天に尾翼を張り
寒雷を聴けり骨肉一つ間に
ひとものと松恋ひをれば霙来ぬ
石蕗真つ黄一茎を剪り壺に挿す
寒林に在り寒木の如く佇ち
一枝に花一つきり冬椿