吹き別れ別れてもちどりかな
吹たびにあたらしうなる千どりかな
淡路島戻る声なき千鳥哉
二つ三つまではよまるるちどり哉
埋火の手にこたへたる衛かな
鷲の目にこぼれものあり川千鳥
そこそこヘ声あゆませてこたつ哉
我のみに口をつかふてこたつ哉
髪を結ふ手の隙あけてこたつかな
ある程のだてをつくして紙子かな
待暮も曙もなき紙衣かな
着尽してものののぞみを紙子かな
ぬふてから笑ひころぶや長頭巾
夜噺の片手に着する頭巾哉
夏の夜のちぎりおそろし橋の霜
独り寝のさめて霜夜をさとりけり
戸の外に是非なく置や冬の月
斯人の気に成ものか冬の月
鳥影を葉に見てさびし冬の月
流れても底しつかなり冬の月
物ぬひや夢たたみこむ師走の夜
おされ合ふてころぶ間もなしとしの市
水仙の香も押合ふや年の市
けふばかり背高からばや煤払
あそび尽しことしも翌のない日まで