和歌と俳句

加賀千代女

閏月のそのめも見えず年のくれ

朝起もひとつに年はくれにけり

行としや連たつものは何と何

年の内に柳ばかりは柳かな

梅ばかり誠の事やとしの内

くれのや山ちかふ成遠ふなり

けさの雪さらへのみちのありやなし

けさの雪さらへの残りありやなし

しなわねばならぬ浮世や竹の雪

そっと来る物に気づくや竹の雪

つめたさは目の外とにありけさの雪

花となり雫となるや今朝の雪

此雪に誰ためなるぞ杖の跡

松の葉のあづかり物や今朝の雪

吹れ吹身をかたつけて雪の竹

吹事をわすれて見るや竹の雪

水仙の花とりもどす今朝の雪

水仙は香をながめけり今朝の雪

声なくば鷺うしなはむ今朝の雪

青き葉の目にたつ比や竹の雪

雪のあした鷹と見るは鳥かな

雪のある松に聞すな風の音

雪の夜やひとり釣瓶の落る音

雪の有ものにきかすな松の声

叩かれて寝夜や雪の降けしき