和歌と俳句

加賀千代女

はつ雪はまた水くさに降にけり

はつ雪やほむる詞もきのふけふ

はつ雪や降おそろしう水の上

はつ雪や子どもの持てありくほど

はつ雪や松のしらべも懐手

はつ雪や返し書く間はなかりけり

初ゆきや風のねふりのさむるまで

初雪やうけてをる手のそとに降

初雪やこぞ初雪も一二寸

初雪やつめたさは目の底にあり

初雪や家毎に降てあればこそ

初雪や橋まで降て落もせず

初雪や見るうちに茶の花は花

初雪や鹿はおもひのちどり脚

初雪や水へも分ず橋の上

初雪や朝寝に雫みせにけり

初雪や麦の葉先きを仕舞かね

初雪や鴉の色の狂ふほど

まだ重き寒さは置ず竹の雪

山彦の口まで寒きからす哉

身に添うてひとりひとりの寒さ哉

身を思ふ思はぬ人もさむさ哉

朝の日の裾にとどかぬ寒さ哉

明烏けふの寒さも東より

鰐口の物言かぬる寒さかな