たまたまの日に酔臥やかへり花
みよし野や余所の春ほど帰り花
雁の名残思ひ付日や帰り花
春の夜の夢見て咲や帰花
曙は暮のすかたやかへり花
寝た草の馴染はづかし帰り花
見るうちに月の影減る落葉哉
人相の幾つにしづむ落葉哉
水のうへに置霜流す落葉哉
蜘の巣に落ちてそうして落葉哉
こがらしやすぐに落付水の月
凩によふぞとどけて今朝の月
もの脱でしぐれ詠めむ松の本
仰向て見る人もなきしぐれ哉
此うへはもう白かろふ時雨哉
時雨るるや一間にきのふけふもくれ
松風のぬけて行たるしぐれかな
水鳥の背の高う成しぐれかな
染ぬ葉を見つめて降や夕時雨
茶のからも山とも成てしぐれ哉
末代に残らぬ道やけふ時雨
そのいきり流すな鴛の又寝まで
をし鳥や水までしろうなるばかり
池の雪 鴨やあそべと明て有
はつゆきは松の雫に残りけり