初霜や茎の歯ぎれも去年迄
飯の湯のうれしくなるやちるみぞれ
灯の洩る壁やみぞれの降処
切株の茸かたまる時雨哉
売飯に夕木がらしのかかりけり
鰒提てむさしの行や赤合羽
能登殿の矢先にかかる 霰哉
かれ草や茶殻けぶりもなつかしき
雪ちるや我宿に寝るは翌あたり
見てさへや惣身にひびく寒の水
越て来た山の木がらし聞夜哉
雪の日や古郷人もぶあしらひ
寝ならぶやしなのの山も夜の雪
心からしなのの雪に降られけり
木がらしにぐすぐす豚の寝たりけり
うつらうつら紙衣仲間に入にけり
としの暮亀はいつ迄釣さるる
はつ時雨俳諧流布の世也けり
ぼた餅の来べき空也初時雨
蕗の葉に酒飯くるむ時雨哉
或時はことりともせぬ千鳥哉
寝莚にさつと時雨の明り哉