和歌と俳句

浪化

名月や土手のはづれのなびき藪

青鷺の番わたるやけふの月

名月に屋敷となりの囃かな

山の端の日の嬉しさや木綿とり

哀れさは鳴あひて吹鳩の声

鵙啼て一霜をまつ晩田哉

鶸渡る空や寺子の起時分

四十雀地に囀るや麦の節

柊は冬まつ花ぞ四十雀

霜を待菊も暮あふ九月哉

木つつきのつつき登るや蔦の間

来る雁にかへる燕も今一足

聖霊も出てみそ萩の花見哉

稲むしろ近江の国の広さ哉

秋風に吹れ次第の糸瓜かな

松茸や笠にたつたる松の針

行秋に藪ある家のあらし哉

有明と気のつくの明さ哉

茶の花の皺ものしたり小六月

下積の蜜柑ちいさし年の暮

夜の雪晴て藪木のひかり哉

埋火や障子より来る夜の明り

雪がこひするやいなやにみそさざい

水仙や藪の付たる売屋敷

雪雲の引のき際をあられかな