和歌と俳句

藤原俊成

霜さゆる枯野の草の原にきて涙ぞやがてこほるなりける

むらくもの時雨し空はそれながら冴ゆる嵐にふるなり

夕暮れはおのが焼くとや炭竃の煙にきほふ大原の里

しきしのび夜半の枕は冴えつれど今朝はうれしき庭の初雪

雪よこれ雲さへこほる冬の雨の空にむすべる名にこそありけれ

澄む月もちさとのほかはこほりけり雪のあしたぞ限りだになし

冴ゆる夜はしほひの浪もこほりけり玉ぞ砕くる床のさむしろ

埋火のあたりに近きうたたねは春の花こそ夢に見えけれ

千鳥なく絵島が埼を絵にかかば友呼ぶこゑや聞こえざるべき

新古今集
今日ごとに今日やかぎりと思へども又も今年に逢ひにけるかな

神風やみもすそがはのさざれ石も君が御代にぞ岩となるべき

君が代は幾千歳にかあふひ草かはらぬ色に神もまもらむ

君が経む千代のためしぞ小松原をしほの山も祝ひそめけむ

君が代を日吉の神に祈りおけば千歳の數や志賀の浦波

住吉の松もすずしく思ふらし君が千歳の和歌の浦

尋ねいる道も知られぬ信夫山そでばかりこそしをりなりけれ

新古今集・恋
あはれなりうたた寝にのみ見し夢の長き思ひに結ぼほれなむ

色にいでず人の袖には露かくる君はうけらの花にやあるらむ

関守はうちも寝ぬともいたづらに帰る恋路はかひなかりけり

年も経ぬ宇治の橋守きみならばあはれも今はかけましものを