和歌と俳句

布施の海

富山県氷見市の南西にあった湖。干拓され、今は十二町潟として残っている。

家持
布勢の海の沖つ白波あり通ひいや年のはに見つつ偲はむ

田辺史福麻呂
いかにある布勢の浦ぞもここだくに君が見せむと我れを留むる

田辺史福麻呂
玉櫛笥いつしか明けむ布勢の海の浦を行きつつ玉も拾はむ

田辺史福麻呂
音のみに聞きて目に見ぬ布勢の浦を見ずは上らじ年は経ぬとも

田辺史福麻呂
布勢の浦を行きてし見てばももしきの大宮人に語り継ぎてむ

家持
明日の日の布勢の浦廻の藤波にけだし来鳴かず散らしてむかも

家持
思ふどち ますらをのこの 木の暗 繁き思ひを 見明らめ 心遣らむと 布勢の海に  小舟つら並め ま櫂掛け い漕ぎ廻れば 乎布の浦に 霞たなびき 垂姫に 藤波咲きて  浜清く 白波騒ぎ しくしくに 恋はまされど 今日のみに 飽き足らめやも  かくしこそ いや年のはに 春花の 茂き盛りに 秋の葉の もみたむ時に あり通ひ 
見つつ偲はめ この布勢の海を

家持
藤波の花の盛りにかくしこそ浦漕ぎ廻つつ年に偲はめ

家持
藤波の影なす海の底清み沈く石をも玉とぞ我が見る