兀山や何にかくれてきじのこゑ
春雨や小磯の小貝ぬるるほど
雛見世の灯を引ころや春の雨
春雨や人住みてけぶり壁を洩る
糸桜灯孤の書院かな
むくと起て雉追ふ犬や宝でら
雛祭る都はづれや桃の月
拾ひのこす田螺も月の夕かな
ことさらに唐人屋敷初霞
高麗舟のよらで過ぎゆく霞かな
立鴈のあしもとよりぞ春の水
きのふ去にけふいに鴈のなき夜哉
花の幕兼好を覗く女あり
花ちりて木間の寺と成にけり
山姥の遊びのこして遅桜
風声の下り居の君や遅桜
菜の花や和泉河内へ小商
菜の花や壬生の隠家誰々ぞ
山鳥の尾をふむ春の入日哉
いかのぼりきのふのそらのありどころ
不二颪十三州のやなぎかな
永き日を云はでくるゝや壬生念仏
くれかぬる日や山鳥のおとしざし
長き日をましろに咲ぬなしの花