柏木のひろ葉見するを遅ざくら
にほひある衣も畳まず春の暮
誰ためのひくき枕ぞはるのくれ
山彦の南はいづち春のくれ
行春やむらさきさむる筑羽山
ゆくはるや同車の君のさゝめごと
春をしむ座主の聯句に召れけり
撞木町うぐひす西に飛去りぬ
家にあらで鶯きかぬひと日かな
隅々に残る寒さやうめの花
朝日さす弓師が見せや福寿草
畑うつやうごかぬ雲もなくなりぬ
はた打よこちの在所の鐘が鳴
畑打や木間の寺の鐘供養
畑打や我家も見えて暮遅し
炉塞で南阮の風呂に入身哉
ろふさいで立出る旅のいそぎ哉
足よはのわたりて濁る春の水
里人よ八橋つくれ春の水
春の水うたた鵜縄のけいこ哉
春水や四条五条の橋の下
菜畠にきせるわするゝ接木哉
大門のおもき扉や春のくれ
うたゝ寝のさむれば春の日くれたり