いつの間に水草生ひて住める門
春雨やすこしもえたる手提灯
草摘みし今日の野いたみ夜雨来る
嫉妬とは美しき人の宵の春
近よれば白粉の穢や櫻人
料理屋は皆花人の下駄草履
園深し雀を逃げて人に蝶
舞台暫し空しくありぬ壬生念仏
亡国の狭斜美し春惜む
春惜む輪廻の月日窓に在り
鶯や卒然として霞める日
雲静かに影落し過ぎし接木かな
造花已に忙を極めたる接木かな
山吹や裏戸あきたり人未だ
宮普請和布かけたる鳥居あり
これよりは恋や事業や水温む
静さや花なき庭の春の雨
雛の灯のほかとともりて暮遅し
春水や矗々として菖蒲の芽
風落ちて窪める水や蘆の角
船橋の浅き汀や蘆の角
葛城の神みそなはせ青き踏む
棒切れをつつめる垢や蝌蚪の水
山吹の雨や双親堂にあり