和歌と俳句

山吹

山吹や昼をあざむく夜半の月 普羅

山吹の中に傾く万座径 普羅

鷹と鳶闘ひ落ちぬ濃山吹 普羅

山吹を折りかへしつつ耕せり 普羅

山吹や山水なれば流れ疾く 多佳子

没日なほ山吹の黄は続くなり 知世子

山吹の花の蕾や数珠貰ふ 虚子

遠目にも山吹の黄の一重なり 立子

山吹や八年泰き被爆の池 不死男

さ山吹ところどころに濃山吹 青畝

剪り立ての八重山吹の花の照 草城

庭に見る病後の散歩濃山吹 爽雨

老眼や山吹の黄に黄なる蘂 たかし

山吹の三ひら二ひら名残かな 青畝

経文の金泥燦と濃山吹 不死男

山吹や燃えて煙吐く薪の尻 不死男

山吹のしだるるさまは離れみる 風生

山吹にさす月ありて月うすし 秋櫻子

山吹に照る月更けて月ばかり 秋櫻子

山吹や老師九十の普茶料理 秋櫻子

山吹やガレの幾筋谿へだて 悌二郎

山吹の一重ばかりよ歌碑古りぬ 立子

山吹を活くる肩の辺花あふれ 爽雨

撥ねものの一壺の仔細濃山吹 静塔

山吹や酒断ちの日のつづきをり 不死男