和歌と俳句

桜餅

三つまでうけたる猪口や櫻もち 万太郎

三人にとゞく一籠さくら餅 かな女

言問の出船の鐘や桜餅 立子

半日を提げし土産のさくらもち 虚子

大き窓陽のはなやかに桜餅 草城

電燈を下げて土産のさくらもち 虚子

午後の日の射し込む部屋や桜餅 立子

桜餅かけ紙の絵の都鳥 風生

花はまだ二分どころなり櫻餅 風生

酔ざめや大碗の茶と桜餅 草城

温泉の宿に降りこめられて桜餅 風生

二つづつくばるあみだのさくら餅 草城

待乳山越え来りさくらもち 万太郎

まづのどをしめす茶であり櫻餅 万太郎

桜餅これよ長命寺桜餅 青邨

さくら餅ともどもかたるよき話 占魚

桜餅女の会はつつましく 虚子

桜餅籠無造作に新しき 虚子

桜餅われうつくしき友をもち 青邨

あくまでも紅うすきこそ桜もち 青邨

薄紅梅の色をたたみて櫻餅 汀女

櫻餅闇のかなたの河明り 波郷