シャツぬいで寝る夜帰雁のわたりけり
春雨のやめば照りいづ花崗岩
春三日月かすかにひかる鳩の巣に
春暁や谷地より出づる道かがやき
雲を洩る日のひとすぢや卒業す
くはえゐるたばこ火うつり蝌蚪の水
水平線春日の馬の四股に澄む
ふえてきし蝶のまぶしき毬となる
蝶のぼる空たかくたかくビルディング
あたたかや雨の力を洋傘に感ず
降る雪の月をかくさずすでに春
鳥雲に歳月おもひわれ歩む
城塞に春の旅人幾たりぞ
松籟をききもやひゐる浅蜊舟
鶯や巌のつくれる波白む
本堂の前の大地や蝶一点
小倉山くだれば小田の蛙かな
春星を吾子のたかさになり教ふ
耕せば土に初蝶きてとまる
長き停車林檎の花ゆ虻が来る
ただ懶し干潟ひろくてあてなき蝶