空さながら良夜の軸の月とのみ
城の上の星の乱れの夜寒しや
埋墓に燈籠三日火の浄土
待宵や鱧のおとしを膳のもの
山々のみな丹波なる良夜かな
萩ことし観月の日を走り咲
秋の宿疾風げしきの鳴らすなり
きりぎりす汝が焼かるる骨にまで
萱屋根の小山のごとき月の寺
沢蟹の甲あをあをと雨月かな
うたた寝の霧の閉ざせば閉ざすまま
佛迎へ火を殖やすなり盆の雨
蜩といまのうぜんの遊び蔓
水澄むにうつりて過ぎて旅の身ぞ
灯に現れて夜念佛みな深編笠
念佛踊大杉雫してゐたり
星浴びて山又山の山に踊る
汝が国に来て汝亡し鳥渡る
明日刈らむ萩を乱していなびかり
枝柿を貰ふふはふはと蚊のたてり
香搗水車香をただよはす宙に柿