雛僧の下駄竝べゐる施餓鬼かな
西日なか漸く施餓鬼はじまりぬ
トラムプの独り占稲光
馬追や更けてありたるひと夕立
一山をおほへる葛に秋の風
おぶひ来し子を下ろしやる萩の花
めつきりと秋風寒きとんぼ釣
前の人桐の駒下駄秋の雨
秋風や障子の内に火打つ音
父がつけしわが名立子や月を仰ぐ
暁は宵より淋し鉦叩
子の投げし石は河原の蓼に落つ
毎日の日つまり今宵十三夜
みぞそばに跼みてをれば日かげりぬ
紫濃き嫁菜の花を摘みてかざし
鶺鴒を忘るともなく見失ふ
新藁を夫は荷なひ妻背負ひ
新藁に腰かけをれば農婦くる
どんぐりを拾うて投ぐる松の幹
あかあかのかしは紅葉に銀杏消え
残菊に二日三日の時雨かな
新涼や立てば葉高き芋畑
金持の別墅見下ろす猫じやらし
山帰来花まだまだで萩の花
ぢいと虫鳴き過ぎてゆく夜汽車かな