実葡萄に西日当ればほの赤く
秋風や蔵の窓より額の文字
案内せるどれが主人か葉鶏頭
蓑虫の大きな一葉まとひをり
朝寒の子に縁側の光りをり
朝寒のショーウィンドーの厚硝子
先に行く人すぐ小さき野路の秋
立ちをればいつの間に解け金芒
月かげの字を書くほどの明るさに
竜胆の蕾それぞれ花にそひ
鵙立ちて西日に向きて見失ふ
大掃除すみて今宵の十三夜
秋晴の茅舎を訪へばよろこべり
細りつつ追ひすがらんと露の玉
秋晴の母と楽しき旅出かな
あの雲に明日も天気よ渡り鳥
宇治橋の手摺高しや薄紅葉
鵯のしぼり啼きゐる松たかし
紅葉山重なり出づる谿紅葉
白壁におはちを干せり紅葉茶屋
香落路はバスも屋根なし紅葉狩
ぽきぽきと揺るゝ竹ある崩れ簗
馳けて来し子のはたはたにふとかまへ
石置いてづいきを浸す秋の川