和歌と俳句

星野立子

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11

実葡萄に西日当ればほの赤く

秋風や蔵の窓より額の文字

案内せるどれが主人か葉鶏頭

蓑虫の大きな一葉まとひをり

朝寒の子に縁側の光りをり

朝寒のショーウィンドーの厚硝子

先に行く人すぐ小さき野路の

立ちをればいつの間に解け金芒

月かげの字を書くほどの明るさに

竜胆の蕾それぞれ花にそひ

立ちて西日に向きて見失ふ

大掃除すみて今宵の十三夜

秋晴の茅舎を訪へばよろこべり

細りつつ追ひすがらんと露の玉

秋晴の母と楽しき旅出かな

あの雲に明日も天気よ渡り鳥

宇治橋の手摺高しや薄紅葉

のしぼり啼きゐる松たかし

紅葉山重なり出づる谿紅葉

白壁におはちを干せり紅葉茶屋

香落路はバスも屋根なし紅葉狩

ぽきぽきと揺るゝ竹ある崩れ簗

馳けて来し子のはたはたにふとかまへ

石置いてづいきを浸す秋の川