啼きながら蟻にひかるる秋の蝉 子規
秋蝉やなきやむ幹を横あゆみ 蛇笏
啼きやめばぱたぱた死ぬや秋の蝉 水巴
避難者のうとうと仰ぐ秋の蝉 水巴
藪の樹や見られて鳴ける秋の蝉 蛇笏
仮堂に重なる仏秋の蝉 爽雨
秋蝉にまひるの風もみづみづし 野風呂
七百年のみなげき今に秋の蝉 野風呂
秋蝉に鳴かれてのぼる菩提梯 蛇笏
温泉ちかき霽れ閒の樺に秋の蝉 蛇笏
戸隠や灯をとりに来る秋の蝉 野風呂
秋蝉に午後はわびしき雲あかり 蛇笏
熊谷にきく秋蝉となりにけり 波郷
読み終へし手紙や秋の蝉遠く 誓子
秋の蝉わが背後にて湧き立てり 誓子
秋の蝉高木にこゑを仰がるる 誓子
秋の蝉鳴くや食事の皿ちかく 誓子
移りたる木を響すや秋の蝉 誓子
雷に音をひそめたる秋の蝉 虚子
秋蝉の音声幹の低きより 爽雨
秋の蝉檜山の西日はやあかし 波郷
秋蝉や口を塞げし捩りん棒 波郷