芋畑や赤城へいそぐ雲ばかり
葛咲くや嬬恋村字いくつ
火山灰被たる葉叢ぞ萩の咲き出たれ
葛の雨鶴溜驛しぶきけり
浅間路に滞まりゐるや秋の風
みんみんの啼きやまぬなり雨の信濃
雨つのるみんみん啼けよ千曲川
雨はげし青栗いよよ青くして
雨のみの旅の七日や萩すすき
葛を搏つ雨や小諸を去らむとす
野の萩のここに咲き入る楢林
熊谷にきく秋蝉となりにけり
朝顔や旅を戻りて古郷の忌
栗林家探し止めてゐたりけり
うつむきて歩く心や蓼の花
露葎鴉のあそぶ松少し
日曜の露おもたしや猫じやらし
露光る教師かこまれ来りけり
昼の虫鬱とあるなり実無柿
蹄鉄の打たれやまざる野分中
大露の杉ばかりなる簷端かな
買ひ戻すすべのなき書や虫の宿
妻が歌芙蓉の朝の水仕かな