和歌と俳句

朝寒

朝寒や白粥うまき病あがり 草城

朝寒やそぞろに日射す苔の庭 草城

朝寒の水の音聴く寝覚かな 草城

朝寒や木の間満ち来し日の光 草城

朝寒や歯磨匂ふ妻の口 草城

朝寒の窯焚く我に起き来る子 久女

朝寒や小くなりゆく蔓の花 久女

朝寒の杉間流るる日すぢかな 久女

朝寒に起き来て厨にちゞめる子 久女

朝寒の峯旭あたり来し障子かな 久女

汲みあてて朝寒ひびく釣瓶かな 久女

朝寒や薩摩絣のめでたくも 喜舟

伶人も朝寒の洟かめりけり 青畝

さしわたる朝寒の陽のにごりなし 草城

朝寒に旅焼けの顔をならべて 山頭火

起出でて木曽の朝寒ひとしほに たかし

朝寒の子に縁側の光りをり 立子

朝寒のショーウィンドーの厚硝子 立子

朝寒の皆が出かけし門を掃く 

朝寒の市電兵馬と別れたり 波郷

朝寒や障子の桟の山の灰 万太郎

朝寒やはるかに崖の下の波 万太郎

朝寒やまたゝきしげき佛の灯 立子

朝寒の嘆言を机拭きにけり 波郷

朝寒の鷺の小膝の水皺かな 波郷

朝寒の月暈きたり榮あれや 波郷

朝寒や厨もすぐに片づきて 汀女

朝寒の人各々の職につく 虚子

朝寒や人のなさけのおのづから 万太郎

朝寒の起きねばならぬ時計鳴る 立子

朝寒のひとり覚めをる富士とわが 風生