荒川の水門遠し秋の雲 悌二郎
前垂に刀豆摘むや秋の雲 鷹女
護国寺の縁に憩へば秋の雲 石鼎
小浅間より晴れかゝりけり秋の雲 かな女
秋の雲天のたむろに寄りあへる 誓子
秋の雲つめたき午の牛乳をのむ 誓子
秋の雲はてなき瑠璃の天をゆく 誓子
秋の雲うすれて天の瑠璃となる 誓子
墓地に聞くおるがん天に秋の雲 誓子
夕空の秋雲映ゆる八重葎 蛇笏
秋雲は湧けり黒髪丈なせる 鷹女
秋の雲掌にあつまるを多としける 耕衣
松の幹人を倚らしむ秋の雲 青邨
ゆく雲はくろい運河の秋の雲 赤黄男
思慕ふかく秋雲を四方にめぐらせり 信子
猿あそぶ嶽の秋雲消えゆけり 蛇笏
かなしめばとて秋雲とどまらず 鷹女
秋の雲みづひきぐさにとほきかな 万太郎
秋の雲流れ軽音楽弾み 草城
茂吉
秋の雲 ひむがしざかひに あつまるを しづ心なく 見て立つわれは
秋の雲歳月はやくながれけり 蛇笏
ふくるると消ゆると秋の雲二つ 爽雨
見つつ消ゆ雲あり秋の雲の中 爽雨
秋の雲父の墓なき父の国に 楸邨
秋の雲大仏の上に結び解け 虚子
秋の雲浮みて過ぎて見せにけり 虚子
秋雲は松の秀に触り滞る 風生
秋雲は老の心にさも似たり 虚子
秋の雲愁のごとく刷けるかな 風生
秋雲や磨き丸太の立ち並び 林火
ぼろぼろの秋の雲ゆく手術痕 不死男